遺産の分割
2018年9月7日
1.遺産分割とは
被相続人が遺言を残さずに死亡した場合、相続の開始によって被相続人の遺産は相続人全員の共有状態となります。共有状態となった遺産を各相続人で具体的に分ける手続きを遺産分割といいます。
遺産は法定相続分どおりに分ける必要はなく、相続人及び包括受遺者の合意により自由に分割することができます。
2.遺産分割の基準
遺産分割は相続人全員の合意により自由に行うことができますが、民法は遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行うものとしています。
3.遺産分割の当事者
遺産分割は相続人全員で行う必要があります。一部の相続人を除外して遺産分割協議を行った場合や、遺産分割協議書に相続人でない人の氏名が記載されているなど、遺産分割協議に第三者が加わっていた場合には無効となります。
ただし、相続開始後に認知された人がいる場合に、その認知の前に行った遺産分割協議は有効です。金銭の授受などで調整することが可能とされています。
4.分割の方法
分割の方法は、次の3つです。
① 現物分割・・・遺産を現物のまま分割する方法
② 換価分割・・・遺産を売却して売却金を分配する方法
③ 代償分割・・・共同相続人の1人又は数人が遺産の現物を取得
他の相続人に対して債務を負担する(代償金を支払う)方法
5.利益相反
遺産分割協議に未成年者の相続人は参加できません。遺産分割は法律行為であり、未成年者は法律行為ができないからです。
一般的に未成年者に代わって法律行為を行うのは親権者ですが、相続人が配偶者と未成年の子である場合、配偶者がこの代理人となって遺産分割協議を行うと利益相反行為(一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為)となるので配偶者は子の代理人にはなれません。
利益相反が生じる場合は、作成した「遺産分割協議書の案」を添付して家庭裁判所に特別代理人(たとえば、子の祖父母など遺産分割で利益を受けない成人)の選任申立てを行います。これが正式に受理されれば遺産分割協議は成立します。
6.遺産分割の遡及効
遺産分割は相続開始のときに遡ってその効力を生じ、各相続人が分割によって取得した財産は相続開始時に被相続人から直接単独で取得したことになります。これを「遺産分割の遡及効」といいます。
ただし、相続発生から遺産分割の完了までは時間を要することも多く、一部の相続人が自己の持分を第三者に譲渡するといったことも考えられます。そこで、遺産分割の前に相続人から権利を譲り受けた第三者を保護するため、遺産分割の遡及効によっても第三者の権利を害することはできないものとされています。
なお、第三者において遺産分割の遡及効の制限を主張するためには譲り受けた相続財産(又はその持分)について、登記等の対抗要件を備える必要があります。