国境を越えた役務の提供を受けた場合の消費税の会計処理
2020年11月4日
「電気通信利用役務の提供」の消費税課税
同じ役務提供を受けながら、提供者が国内か国外かで消費税の課税対象となるか否かに違いのあった不備を是正したのが、平成27年10月1日以後適用の「電気通信利用役務の提供」にかかる税法の改正でした。国外からの「もの」の譲渡であれば、輸入時に消費税が課されることで提供者の国内外の差はなく、この差異の是正もありました。
同役務には次のような取引が該当します。
・ネット配信の電子書籍・新聞・音楽等
・クラウド上のソフト利用・ファイル保存
・ネットを介した広告の配信・掲載 ほか
※ゲームソフト利用や英会話教室等、事業者に一般的でないものは割愛しています。
電気通信利用役務の受領者側の会計・申告
(1)消費者向((2)以外)役務への課税方式
例えば、電子書籍やストレージなど事業者以外の消費者にも提供される同役務では、国外事業者に申告納税義務が課されます。
国外の役務提供者が国税庁の「登録国外事業者名簿」に登録していれば、受領者側の会計処理・消費税申告も、課税仕入れとして、国内事業者からの場合と同様、消費税の税額控除ができます。登録がなければ控除できず、法人税上の経費となります。
領収書に「○○社は登録国外事業者であり、消費税の申告および納税の義務を有します」と記載があれば、この取り扱いです。
もしくは、登録名簿で、①アマゾンサービスを登録番号4のAmazon Services International,Inc.、②ファイルクラウドサービスを18番のDROPBOX INTERNATIONAL UNLIMITED COMPANYと確認もできます。
(2)事業者向け課税方式(リバースチャージ)
例えば、広告の配信など、役務の提供先が事業者のみに限られるような取引の場合、申告納税義務を国外事業者に負わせるのではなく、役務の提供を受けた国内事業者に課す方式が取られています。
具体的には、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が、「特定課税仕入れ」として、申告・納税を行います。これをリバースチャージと言います。しかしながら、実際には、課税売上割合が95%以上の事業者等には、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとし、簡素化されています。
※「特定役務の提供」も「特定課税仕入れ」としてリバースチャージ方式による申告・納税義務が課されていますが、本稿では割愛しています。