日本庭園と言えば、京都龍安寺の石庭や、金沢兼六園の雪吊りなど全国にたくさんの名所があります。四季の自然の美しさを愛する日本人には、庭にも特別の思い入れがあり、居宅に日本庭園が造られ、そのまま相続されることもあります。
宅地ではなく設備の評価
相続税では、財産評価基本通達(評価通達)により、庭園は宅地ではなく、家屋に附属する庭園設備として評価されます。家屋には含まれず、単独で評価され、評価額は、調達価額の70%とされます。
調達価額は、相続時に庭園設備を現況により取得する場合の価額とされますので、造園業者に施工を依頼するときの価額です。庭石や灯篭、植栽など庭園の材料費用に加え、運搬費、工事費などから構成されます。
庭木、庭石などの一つ一つに転売価値は乏しく、相続税評価額はゼロとする見方もあるかもしれません。しかし、相続税では、庭園が一体となって生み出す経済的価値を評価しており、同様の仕様の庭園の工事を造園業者に見積もってもらえば、そこで生まれる価値が示されることになります。
なお、固定資産税(償却資産)においても庭園は、家屋とは別に課税されます。
通達評価の意義
相続税法の時価は、財産の客観的交換価値とされますが、一義的に確定させることは困難であることから、評価通達によって画一的な評価方法を定めています。これにより、どの納税者が評価しても同じ評価方法となり、納税者間の課税の公平が保たれ、評価手続きに便宜がはかられます。また、税務署にとっても効率的な徴税が行えるメリットが生まれます。そこには評価方法の合理性が前提とされ、形式的な評価を認める根拠となっています。
タワマンの評価は、鑑定評価
ところで、タワーマンション節税の裁判では、一棟マンションの相続税評価額が評価通達によらず、鑑定評価額で評価されました。通達評価額と鑑定評価額に表される時価との開差が4倍近くになり、評価通達による評価の合理性が失われたこと、また租税回避行為が認定されて課税の公平を損なうものとされたことによります。税務署の職員も納税者も評価通達に拘束されますが、状況によって評価通達で評価されたり、あるいは鑑定評価で評価されたりするのは、納税者にとって信義則に反しており、軸足の定まらない運用がされています。